椛島からの手紙〜出会い

郵便

昨晩、ノートを1枚ちぎって作った封筒が郵便ポストに届いた。
いらんチラシが散乱する中、その異物は紛れも無く椛島からの
手紙である。
 
椛島は大学時代からの悪友と言えばいいのか
入学当初、体格が大柄であるため当たり前のように
アメフトサークルから勧誘を受けた僕が
その説明会場である教室に尋ねてみると彼はいた。
 
アメフトという競技は良くできたもので
いわゆる女の子にもてる、スラーッと足の長いイケメン
(イケメンではないがアンガールズのような体格)から
ご飯は毎食3回はおかわりします!と言わんばかりの
大柄な体格まで(安田大サーカスの両端と言えば分かりやすい
だろう)あらゆる人種が参加、活躍できるスポーツである。
 
柄でもなくイケメンに必至に勧誘というより
むしろ説得される僕を尻目に彼は既に入部を
決めたらしく、勧誘するわけでもなく教室の片隅を
どーんと数名で陣取っているその大柄な体格の
先輩たちと調子の良いことでも言って笑いをとっていた。
 
そのあと、いくつかのサークルを見学しようと
キャンパスを歩くと、向こうから、椛島に違いない
歩き方で彼はやってきて、僕と目が合うなり
「あ、アメフトの!」と妙に親近感ある表情で挨拶してきた。
僕は「どーも」と無愛想な返事をするが
「待っているよ!」と言わんばかりに僕の
肩をポンポンとたたいて、笑顔で通り過ぎた。
 
もしかしたら、僕がアメフトをはじめる切っ掛けは
文武両道を実践しているイケメンの先輩による
説得ではなく、その肩を叩いた椛島なのではないか
という気すらしてきた。椛島は福岡県出身の九州男子。
別に説明しなくても、男前な足にサンダルでぺたぺたと
蟹股で歩き、どこで売っているのか想像のつかない
土色の衣服と鞄、そして似合っているとはお世辞にも言えない
銀縁丸めがねとしぐさから一目瞭然、田舎ものである。
 
田村亮子が活躍していた同じ県で、彼は柔道に没頭し高校時代は
1人しかいない応援団の団長(そりゃそーだが)を努めたらしい。
何よりも、その活躍ぶりは彼の家にある卒業アルバムの写真から
垣間見ることができる。広い校庭で、全生徒が見つめる中、巨大の
校旗を身体一杯持ち上げていた。柔道部も何故か彼1人。顧問教師と
柔道着の椛島のツーショットが他の団体部活動の写真より
妙に目だった。
 
(つづく)