『茶の味』

彼はこう言った。
 
+ 映画だとお金かかるし、大きすぎる。
+ CMだとスポンサーありきでしょ。
+ 映像制作に心地いい場所が無かったんです。
 
そして彼はレンタルという答を見つけ出し
[grasshoppa!]という雑誌のような
映像作家たちの自由研究映像集DVDを
レンタルのみで毎月発表した。
 
+ 僕はアイディアが浮かんだら
+ 仲間内でデジカメ持ち出してこんな感じ
+ ってサンプル映像を撮影するんですけど、
+ 実は、もうそれだけで満足なんです。
 
そんな映像製作者にとって自由で夢の
環境を構築してしまった彼。
しかし一つだけ誤算があったようだ。
この[grasshoppa!]が予想以上に注目を集める。
メーカーは限定枚数を設けて売り出す。
あっという間の売り切れ。
ならば一般セルDVDとして販売。ベストセラー。
調子にのったメーカーは総集編も発売してしまう。
さすがにこちらも好調とまでは行かなかった
ようであるが、思いもよらぬ収入。
 
そして、彼は思い立ったようだ。
プレッシャー無く、自由に映画を撮ることを。
そんな背景で出来上がった作品が
今月17日から公開された『茶の味』である。
渋い。
 
おそらく日本人にしか分からないこの絶妙の間。
外国メディアは新しい小津安二郎だと評しているが
ノンノンノン。
このセンスはそんな次元で語ってもらいたくないね。
まぁ、そうとしか表現できないのであろう。
日本人であることが誇らしくさえ思う143分。
やはり新居に縁側は設けよう。