野球という物語

長島茂雄が最後のダブルヘッダーを終えて
満員の観客に向けて涙を流したあの日。
おそらく日本野球界の今日は
必然のものになったのだと思う。
そして、王貞治がホームベースにバットを置き、
1塁ベースにファーストミットを置いたあの日。
その今日は確信になったのだと思う。
 
長島ジャパンは素晴らしかった。
彼らは野球の原点を彼ら自信も気づいたと同時に
僕らにもそれを示してくれたのではないだろうか。
勝つことに餓えた、お金も、プライドも
全てを投げ捨てた野球戦士たちが
日本という国旗を背負ってひたむきに
野球という日本文化をベースボールという
世界の場で強烈に印象付けてくれた。
 
その原点には、やはり長島茂雄がいる。
勝つことの喜び、勝つことの難しさ。
見せる野球。楽しむ野球。
いつしか知れず、日本のペナントレースから
無くなってしまったそのひたむきな努力。
そこから生まれる「感動」そして新しい「夢」
種は途絶えた。残念ながらその現実を
見つめなおすべき時がきた。
 
もはや、巨人、大鵬、目玉焼きの時代は戻らない。
同時に、あの輝かしい時代はもう
二度と来ない。この悲しき現実。
でも人は忘れない。かつての夢をあきらめない。
そこを歩く意味はあるのか。
そこを歩く意味はないのか。
このもどかしさ。どこにぶつける。
 
「我が巨人軍は永久に不滅です。」
この一言にかつての人々は固執してきた。
しかし、そろそろ正すときがきたのだ。
かつて巨人軍が、世界一を目指した全日本チームで
あったように。だから長島茂雄は全日本に
こだわった。その精神を一番の愛弟子である
中畑清が受け継ぎ、彼はアテネで泣いた。
30年前、師匠が後楽園球場で流した同じ涙で。