人に優しくするということ。

僕のエピソードを語れば
兄さんの高校受験のため小学校1年の間だけ埼玉県みずほ台の
団地アパートで母親と3人で生活したことがある。

団地の近くに真新しいセブンイレブンが出来て
僕は、当時100円のおかしでおまけについてくる昆虫シリーズを集めていました。

とある日、埼玉県上福岡に住んでいるおばあちゃんが
空瓶に余った1円を貯めており、それを僕にくれたのです。

数えてみると180円ほどありました。
僕が、買うものといえば、当然昆虫シリーズが欲しいわけで
詳しく説明するとクワガタはもう持っていたからどうしても
カブトムシが欲しかったわけです。

で、思い切って1円玉を100円分何度も数えて
ビニールにきっちり100円分入れてセブンイレブンまで持っていきました。

今思えばきっちりじゃなく余分に持っていけばよかったんだけど
僕には昆虫シリーズのカブトムシしか見えず、ビニールを抱えて、
売場にある全ての箱を吟味しながら「これ下さい」ってカウンターに持っていったのです。

当時、まだオープンしたばかりだったからか、お客様は僕1人
店員のお兄さんも1人、1円玉がいっぱい入ったビニールを抱えた僕に
「いらっしゃいませ」と笑顔で答えてくれたのです。

そして、嫌な顔1つせずに「これで買うんだね」とビニール袋を受取ってくれました。
そして丁寧にビニールから1円玉を取り出しながら10枚づつ重ねた山を
10個できるのを一緒に確認してくれました。

すると、なんと、1円足りない!

どこかで落としたのか、それとも数え間違いだったのか
どうしよう、どうしよう、としている僕をよそ目に
お兄さんは何も言わずにカウンターの影にある自分の財布から
1円取り出して、9円の山にその1円を重ねました。
「はい、これで100円だね。」といって笑顔で僕を送り返してくれたのです。

興奮して、何がなんだか分からなくなってしまった僕は
うれしさのあまり「ありがとうございます」とも言えずシールを貼ってくれた
昆虫シリーズの箱を持って一目散に走って家まで帰りました。

興奮冷めやらぬまま僕は
母親に「あのね、あのね、セブンイレブンのお兄さんがね...」と報告したのを
今でも鮮明に覚えています。

やさしさって人から分けてもらうもの。
少なくとも、今の自分にある「やさしさ」の一部は
このセブンイレブンのお兄さんから分けてもらったことには違いないのです。

でもね、だからって僕が今でもセブンイレブンばかりを利用しているかというと
そうでもない。おそらく、家に近いam/pmの方が、
もう3分かかるセブンイレブンよりも利用頻度は高いと思う。

消費者の心理ってそんなもの。

やっぱり、あの「お兄さんがいる」みずほ台のセブンイレブンじゃないと
駄目なんですね。

だから、今僕はお店に
もっと言えばそこで働く人にこだわっているのかもしれない。