『出血!スチームボーイ』

久しぶりに鼻血出す。
しかも映画を観ている最中に。
しかも『スチームボーイ』の完成披露試写会で。
(以下、ネタばらしませんのでご安心を。)
しかも大友克洋監督の3列後、4行右の席で。
しかも始まってまだ間もないところで。
まだクライマックスじゃないよ。
落ち着け。落ち着け。
でも、鉄の味がする、赤いらしき(暗くて見えない)
液体はツーっと右の鼻穴から出続ける。
慌てて、鞄から丁度今朝もらった
アイフルの手配りティッシュを出すほど
ヴァージンシネマズ六本木ヒルズが誇る
スクリーンの映像も、スピーカーの音響も
盛り上がる様子はまだない。
どうする。
しかも、映画に関わる人間として、上映中に
がさごそするのは僕のポリシーが許さない。
どうする。
さらには、『MEMORIES』から10年も待ち焦がれていた
映像を一瞬たりとも見逃したくはなかった。
結論。放っておいた。
 
満を持してエンディングが終わり
一瞬暗闇の中、その3列前、4行左の席に向かって
無我夢中で拍手した。
劇場の照明が点り始め、会場の拍手に応える
大友監督を尻目に両隣の先輩から
「鼻血出ているよ!」と突っ込まれ
「あ。」と思い出した。
「そんなに興奮したん?」
「うん、わりと最初の方から。」
なんて、志村けんのコントにありがちな
右の鼻穴から赤い筋を1本たらして、
真顔で答えた。
そう言えば
先週末、三茶にある映画をモチーフにした
創作居酒屋「時計じかけのオレンジ」で
赤い液体の中にカプセルが一つ沈んでいる
カクテル『AKIRA』を飲んだ。
多分、今頃になって効いたんだ。
鼻血に染まった両手を劇場のトイレで洗いながら
鏡に写る水で洗い立ての己の顔を見て
思わず、満足面をしてみた。