なまけものになりたい。

水木さん

午後、江戸東京博物館へ行く。両国は初場所
初日で大賑わい。相撲取りが改札をスタスタ通り
過ぎて行く毎に鬢付け油の匂いがする。
ただ、今日の目的はこちらではなく、水木さんの
「なまけものになりなさい。」という提案に
「はーい。」と両手をあげて返事するかのごとく、
妖怪ワールドにどっぷりと浸かりにきたのである。
何気に両国は浪人時代に熱帯魚屋を探して歩いた
以来のようだ。人間の記憶というものは曖昧なもので
両国の三大名所でもある国技館江戸東京博物館
さらにはライオンの本社は隅田川を挟んでそれぞれ
ばらばらに散っているものだとばかり思っていたが、
3つともどーんと隣接していた。(ライオンの
本社が名所であるかは疑問だが、両国と聞いて
私の頭に浮かぶ三つに小堺一機の笑顔と一緒に
ライオンは入る。)まるで記憶とリアルな実在が
逆転したかのような体験。
 
まま、そんな前置きはよしとして、意外や意外。
水木さんは人気があるようでものすごい混雑。
入場までに、どーみても憩いの場であるような
スペースまで使える部屋という部屋を、
行列のなすがままに歩かされて、30分程度だろうか
やっと入場できた。さすが展示プロデューサーに
荒俣宏さんと京極夏彦さんを迎え入れているだけあり、
気合の入った展示。800点に及ぶ水木さんの作品群は、
丁度スペインのピカソ美術館にあった教科書の落書と
同等レベルにまで及ぶ。8歳のころに描いていたという
水木さんのまわりにいた人々の人物像。
一人一人ちゃんとキャラクター化している。
映画雑誌をそのまま模した鉛筆画や幼い頃に描いた
漫画などまで残っているものは全て展示しているかの
徹底ぶり。しかもその作品群が水木さんの人生を
あたかも小説で読んでるかのように章立てで展示され、
各章のエピソードをこの展示のためにわざわざ
描き下ろしたという漫画で表現している。
 
貧乏時代、紙芝居の絵描きでなんとか生活
していたころの作品を原画で見ることの出来る幸せ。
さらには上京して「テレビ君」で脚光を浴びてからの
作品原画とわざわざ作り自ら貯蔵していたという実物大の
愛すべきフィギアたち。特にお気に入りは人魂のてんぷら。
さらにはやはり水木さんの色使いのうまさに脱帽である。
まず黒ペンで描き下ろした画を一旦コピーしてから
日本画の顔料を使って彩色していく。白黒では出ない
なんとも鮮やかで異様な水木さんワールドへと
変身してしまう。表現の全てを画に託してきた賜物。
まさにお金を出して見るに十二分値する展示であった。
「プロ」とはこういうことを言うのだよなと
今晩の夢には水木さんの微笑ましくもある妖怪たちが
出てくることを楽しみに両国を後にした。
 
「大(Oh!)水木しげる展」
http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/kikaku/page/2004/1106/200411.html