コインロッカーの真実

久しく公衆のコインロッカーを使ったことが無い。
むしろ使いたくないというのが正直なところ。
どうも子供時分に刑事ドラマを見すぎたせいか
あのロッカーの中には白い粉か、ピストルか、赤ん坊か
万札か(万札なら悪くもないが)
小学生のときに読んだコロコロコミック全冊とか(懐かしいが入りきらない)
もしくは学研の「小学校の科学」シリーズ全学年分の付録とか(ちょっとうれしい)
とにかく開けてしまうと
何やらややっこしいものに巻き込まれてしまうようで
気が気でないのだ。

そんなもんだから、市民プールで、あるいは温泉なんかで
仕方なしに、コインロッカーを使わざるを得ない時
扉を開ける瞬間、妙に周りをきょろきょろしたり
妙に力んだりしてしまう。
おまけに、使用後に100円戻ってくるロッカーならまだしも
使用料として回収されてしまうタイプは
そのロッカーに飲み込まれる100円が
アリ地獄にひっかかって必死にもがいているアリを
見ているかんじに可哀相で
なんだかそのロッカーに説教したくなり
気が気でないのだ。

もし自分がロッカーの内側に使われるステンレスだとしたら
ずっと真っ暗である。換気もない。
暑い日なんか
オアシスの希望すらない砂漠のようだ。
ある日、扉が開いてものすごく久しぶりの太陽光
まぶしい眼の焦点を必死に合わせようとしていたら
なんか臭いものが。
コンビニのビニールに入れたキムチなんか入れんなよぉ。
って言おうとしたら扉がバタンと閉まってしまう。
せめて突っ込みぐらいさせてくれ。
これから何時間、このキムチと向き合えばいいのだろう。
そうだ、会話してみよう。
ねぇねぇキムチくん、キムチくん、やっぱり出身は韓国?
キムチ「...」
白菜ってさー、やっぱりキムチくんになることが幸せなのかなぁ
ぶっちゃけそこんとこどうよ。
キムチ「...」
困った。
しばらくたって、あきらめきったころ
ガチャっと鍵を空ける音。
やっと出ていってくれそうだ、いやー長かった。
どことなくキムチとのお別れに哀愁なんか感じたりして
思いっきり深呼吸する準備をしていたが、
再び扉は閉まり、そこにはずっとキムチの匂いがこもったままで
気が気でないのだ。

そうだロッカーの中に、スポーツ競技場を創ろう。
なんかわくわくしてきた。
札幌ドームみたいに
グランドの芝生入れ替え式にすれば
中田のキラーパスも見れるし
新庄のダイビングキャッチも見れるわけだ。
でもなー5月の北海道シリーズで
清原の豪快ホームランなんかぶちこまれると壁に玉跡なんか付けられて
痛い思いをするのは嫌だ。
そーだ、体育館はどうだ。
こっちであん馬、あっちで鉄棒、今度は跳び箱
なんかかわいらしい白いソックスのつま先が
あっちこっちでぶらぶら宙を舞っている様をずっと見ている。
悪くない。
でも新体操は見ているのはつらいし
ボールなんか持ってセクシーポーズとられるともう
気が気でないのだ。

今度は、牧場で牛が数匹。
のどかでいいけど、松本人志のぱくりだ。
では、舞台はどうだ。
「ユーリンタウン」日本版なんか上演してみる。
マルシア別所哲也の歌唱力に圧倒され
鈴木蘭々のかわいさに驚き
南ちゃんの踊りのうまさにあいた口がふさがらない。
悪くない。
「8時だよ全員集合!」。
「おぃっすー!」
「しむらー!うしろー!うしろー!」
「きゃー」「かとちゃーん!」
でも水とかやかんとか上から
ちくいち落とすのは面倒くさいし。
タイミングずれたら気まずいし。
そうだ、停電にしてしまえ、えい。
俺はばかか。
それはそれはもう考えただけで
気が気でないのだ。