過剰なトイレ

みなとみらいトイレ

「過剰」というと悪いイメージしか思い浮かばない。
「過剰サービス」「過剰摂取」「過剰在庫」...
それを言うなら余剰在庫か。
ま、とにかく「過剰」が良い意味で使われないのは確かである。

たまーに客で洋服屋さんなんかに入ったりすると
獲物が来た!と言わんばかりの笑顔となれなれしさで
「何かお探しですか?」なんて店員に言われて
「うるさいわ、ぼけぇー」なんて言い返す勇気も無く
よく締まりかけた電車の扉の前で
ダッシュするも乗り遅れた人が何もなかったように
折り返すのと同じような行動を僕は取る。

そんなだから接客業は向かないのは分かっているのだけど
アルバイトスタッフには
なんでそこでお客様にプラスワントークしないんだ!
なんて叱ったりする。
ま、人間なんて矛盾だらけな生き物なんだけど

でもそこには「過剰」というものがあってはならない
とにかく接客業においてあってはならない。
という確信めいたものはずっと持っている。

この日、友人の結婚1年目のラブラブ新居にお邪魔して
「勝ち組」とはどういうものかを教わりに最寄のみなとみらい駅へ行った。

そこでついに発見してしまった。
見てしまった。
なんなんじゃー、これは!

なんと男子トイレのサインの下に
トイレ内の見取り図が描かれている。
ここがション便場で、ここが大便場なんて。
しかも「障害者用トイレは入って突き当たりにございます」と
銀座線に乗ると聞こえる機械ちっくな
女性らしき声がご丁寧にリピートされているではないか!

しばらく、そこで立ちすくんだ僕は
果たして女性トイレはどうなっている?
と見てみると、今まで一度も見たこと無い
女性トイレの見取り図を見て
へー、ション便場はやっぱり無いんだーなんて
妙に当たり前のことに関心したりした。

うそ。
一度だけ女性トイレに入ってしまったことがある。

10年ぐらい前にP3で行われた立花ハジメさんの「信用ベータ」展で
ハジメさんと横尾忠則さんの対談を見に行ったとき
間違って女性トイレの大に入って出ずに出れなくなってしまった
経験が実はある。

言い訳をさせてもらうと
そこの会場オーナーがわざとやっているのかは知らないけれど
男性トイレと女性トイレのサインを
明らかに故意に青と赤を取り替えて掲示してある。
つまり男性トイレは赤の男性ピクトグラム
女性トイレは青の女性ピクトグラムになっているのだ。

おそらく腹を壊していたのか思わず青い方のトイレの
大に駆け込んで、要を足して、落ち着いていたところ
そんなに離れていない公演ステージでスタッフが
「えー、あと10分ほどで公演をハジメまーす。」
「トイレに行かれたい方は今のうちに済ませてくださーい」
なんて放送をしやがる。
すると、なんだか女性の集団の声がわんわんと近づいてきて
「え、なんで、なんで」ってどきどきする僕。
気付いたときはもう遅かった。
大便器に座ったまま僕は赤面とひや汗でびっしょりの顔を手で覆って
公演が始まるまでずっとその個室にこもっていたのは言うまでもない。

だからか、店舗スタッフであるがゆえ
お店の女性トイレを清掃するために入るときは
今でもどことなく「過剰」に赤面してしまうのだ。

こんなことぶっちゃけちゃったけど
世の女性の皆様、本当にごめんなさい。
悪意は全くなかったのです。
時効なので許してください。