高円寺の中古レコード屋さん

知人の舞台を観るために、高円寺へ。
中央線で新宿より東へ行くのは久々で
実は浪人時代に半年、中野のアパートで1人暮らししていたのね。
でも1日の大半は中野サンプラザのスポーツジムで
筋肉鍛えていた記憶程度しかないのだけど。
丁度、カット1000円の中野の床屋さんで流れていたラジオのDJが
当時、劇場公開中のトイ・ストーリーについて熱く語っていた
記憶もあるからその頃だったのだろう。
遠い昔だ。
で、高円寺。
早めに着いたので、ラーメンでも食べようとお店を探す。
早めに着いたといっても、せっかくの高円寺だし
「ラーメンでも食べよう」という意思のもと早めに家を出たのだけど。
ちょっと時間があったので、ふらーっといい味出している
中古レコード屋さんに入る。
グラスホッパ!『FROG RIVER』 の第1話で出てきたような
中古レコード屋さんが
リアルに、そのまま、そこに存在していた。
お昼なのに店員さんがやたらと多い。
しかもみんな衣装がひっぴーだ。
男女4,5人が何するわけでもなく、レジ付近や
売場でロイヤルテネンバウムスのごとく
真っ直ぐ立って、真っ直ぐこちらを見ている。
その店員さんの1人、背の高い女性は
黒いアイシャドーにおかっぱ頭。
お前は黒柳徹子か!って突っ込みたくなったけど
そんなお店の男性はやっぱりどっか小倉一郎なのである。
小倉一郎は「金八先生」で最初のころ教員室で武田鉄也の
対面で1人ライバル役をやっていた人ね。
「熱中時代」でも水谷豊のやはりライバル役だった人ね。
白いTシャツにブーツカットジーパンが似合い、
もみ上げは残して真っ直ぐ切ってくださいって感じ。
ポロシャツのボタンは一番上まできっちり留めますって感じ。
必濃い。
ま、とにかくこの店員さんたちが、この店内にいるときは
それはそれで味が出ていいのだが、外に一歩でも出た瞬間に、
世に言う、浮きまくりなのである。
この人たちの日常生活が知りたいなんて思っていたら
なんか乗りのいい70年代のソウルが店内に流れ始めた。
といってもそれが70年代なのか80年代なのか
僕の音楽の知識なんてそんなものなんだけど
その店員さんたちが、一斉にみんな曲のリズムに乗せて
腰を振り始めるではないか。
それに乗せられて、4,5人いた店内のお客さんまで腰を振り始める。
何故かさんまにリンクはられちゃったけど
まるで70年代なのか80年代にトリップした様。
僕以外の店内の人間がみんな、リズムに乗りまくっている。
「え?え?」と
きょろきょろしている僕に、腰振る店員さんが
「あなたも、どうぞ、どうぞ!」なんて眼で訴えてくるもんだから
はにかみながら僕も腰を若干振らして、そうっと奥のほうへ退く。
奥にレジからの死角があって、その角に隠れて
振り返ると、丁度ソウルはさびのフレーズ
にさしかかり、腰振る踊り人たちのテンションは
頂点へと達しようとしている。
僕は、あの中から逃げてきたことが正解であった
ことを確かめるように「ふー」と安堵のため息をつく。
必ずこの手の中古レコード屋さんでは奥の
片隅にJ-POPコーナーがこじんまりと存在し、
この中古レコード屋さんも例外ではなかった。
かつて神保町の予備校に通っていた浪人時代の僕は
このこじんまりとした、あらゆる中古レコード屋さんの棚から
細野晴臣と当時は若手CGアーティストだった藤幡正樹
コラボレーションしているブックレット付きレコードやら
スネークマンショーのHAPPYENDの見本盤などを探しあて
今も、宝物として僕のレコードコレクションに眠っている。
こうして両手でリズム良くレコード盤を探すのも久しぶりだ。
で、必ずそこに出くわすのは
坂本龍一と出会う前の矢野顕子のレコードと
YMOになる前の高橋幸宏のレコードだ。
こんなにもレコード出していたのね。
それもそのはず、たいていの中古レコード屋さんの
J-POP売場の1/3はこの2人で埋め尽くされる。
僕は2人とも好きなアーティストだが
中古レコードを買うほどではない。
そしてお決まりのように、山下達郎世良正則
レコードが何故か1枚づつあるのだ。
ときどき、杉山清隆、泉谷しげる井上陽水なんかにも出会う。
懐かしい。
そんなこんなしてたら、舞台開演までの時間がなくなり
結局ごく普通のラーメン屋で、
10分ほどでごく普通のラーメンを口に掻き込み
知人の舞台劇場「明石スタジオ」へと急いだのであった。