本屋さん巡り

後藤繁雄さんの新刊「僕たちは編集しながら生きている」を
読み終えて、文中で紹介されている70年代の特集雑誌
『世界のグラフィックデザイン』シリーズを探しに神保町へと行く。
浪人時代は良くこの近辺の古本屋さんを行き来したものだけど
大地の味だと絶賛したトムヤンクンを最初に食したのも
未だにはまっているベルギービールを最初に飲んだのも
この神保町であったな。
あれから早10年、時は過ぎ去ってしまった。
まぁ、それなりに老舗の古本屋さんは生き残ってはいるものの
時間が遅かったのか、それとも日曜日は休んでいるのか
半分以上の店がシャッターを下ろしたまま。
何の飾り気もない看板に書かれた書店の文字と電話番号の
黒ペンキから哀愁が漂う。
開いている本屋さんと言えばサブカル雑誌などを創刊号から全て
取り揃えているお店から、古き良き映画のパンフレットやらポスターなどが
20坪の店内にところ狭しと乱列されているお店やら、
音楽のことなら何でも聞いてと言わんばかりに雑誌はもちろん、
バンドのTシャツからバッチなどまで置いてあるお店など
随分と個性豊かになっている。
昔はそれなりの品揃えの違いはあったのだけど、ここまで
専門分野がきっちりカテゴライズされてはいなかった気がする。
この時代、特徴がないと生き残れないということなのだろうと
勝手に納得していたら
いい感じのデザイン専門書店を見つけた。
しかし、そこは新刊だけのお店。
洋書も相当揃っているようだけど、今日の目的は違う。
突然「蛍の光」が店内に流れ始めた。
どうやらこの界隈の閉店時間は19時らしい。
駄目もとで店主に、目当ての古本を売っていそうな書店を聞いてみたが、
残念ながら期待する答えは返ってこなかった。
久々に日焼けした古本の匂いが嗅げただけでも良しとする。
 
さて、ほとんどの古本屋さんが開いていなかった原因を考えていたら
神保町から乗った半蔵門線を表参道で下りて、並木通りを歩き
途中、TTRをオープンするにあたり、挨拶がてらにジャージとリュックという
かなり挑戦的な格好で挑んだにも関わらず、店員から心地よい「いらっしゃいませ」
の挨拶をされたことがとても印象に残っているルイ・ヴィトンの前を通り過ぎ
原宿のBOOK・OFFへと向かってしまった。やはり、こいつか。
それにしても日曜日の20時だと言うのに、憎たらしいほどに繁盛している。
入口で漫画本を4,5冊手にした女の子の店員が何やら楽しげに
通り行く人々に声をかけている。店外にスタッフを配置できるということは
それだけ儲かっているということを意味する。しかも2人も。
2Fに上がり、デザイン雑誌コーナーへと行くと、予想はしていたが
盛り上がっている1Fの漫画コーナーほど品揃えは宜しくない。
とある雑誌で丁度SFCの立ち上げに参加したころの藤幡正樹先生の
記事を発見。そのころの代表作品「禁断の果実」が美しい。
でも雑誌価格が450円と中途半端な値段だったので記事を全部
頭に入れて棚に戻した。まぁ、そんなところだ。
店を出て、目的が達成できなかった物足りない気持ちを抑えるために
iPodに入れたくるりの何曲かを街の騒音が消えるくらいの音量にして歩く。
丁度、勝ったか負けたか分からない代々木体育館の日本対韓国の
男子バレーボールを見終わった観客に紛れながら渋谷駅へと向かう。
パルコブックセンターがまだ開いていたので、またもや寄り道。
手にしたのは「ブックストア―ニューヨークで最も愛された書店」である。
しかも、置かれていたのは後藤繁雄さんの
新刊「僕たちは編集しながら生きている」の特集コーナー。
皮肉なものだ。