OLの会話

最近、お昼はわざと1人で外食にしている。
なぜかというとOLの会話を盗み聞くのが好きだからだ。
 
A:西野さんが電話全く出てくれないから、ずっと電話番になっちゃった。
B:それさぁ、めぐみも社員なんだからちゃんと浅野部長に言った方がいんじゃない。
A:でもほら、浅野部長、荒木さんとできてるから、なかなか言い出せなくって。
B:そうかぁ、西野さんの思う壺かもねぇ。
 
もうこんな無防備な会話があちら、こちらで聞き放題に展開されているから、
こんなにもイメージトレーニングにもってこいの空間を
ぐだらない同僚の愚痴などに邪魔されたくないのである。
そもそも、OLの会話に興味を持つようになった切っ掛けがある。
 
大阪の店舗が大変だということで、出張先の上司から
有志を募って助けに行って欲しいという指令が私に出たのである。
もともと現場好きの私は心から喜んで参加を即断し
上司から面倒を見てくれないかと相談されているちょっと元気のない
若手女子社員に「○○さんも大阪行かないか?」と声をかけてみた。
日々デスクワークに疲れた彼女には身体を動かし
もともと店舗で声を張り上げていた当時を思い出す
良い切っ掛けになると思ったからである。
ところが「体調が良くないので、ちょっと」と声にならぬ
困った表情が返ってきたため、「厳しいな。今回は辞めとくか。」
とはにかみ笑顔で自分の誘いを訂正して、通常業務に戻させた。
 
で。
この光景を眺めていた後ろの列の経理女子社員たちからは
こー見えたらしい。
 
私が上司から面倒な大阪店舗の助けを依頼され
自分が行くのが嫌なために、それをかわいそうな若手女子社員に
押し付けようとした。しかし、翌朝、若手女子社員を残して
私は1人大阪出張でいなかった。
つまり私は若手女子社員の押し付け作戦に失敗し、
なおかつ1人嫌な出張に出かけたという負けっぷり。
 
はじめてこのことを聞いた私は絶句した。
何故分かったかというと来年この経理女子社員の1人と
結婚する仲の良い男先輩から教えてもらったからだ。
全くそんなつもりはないのだが、他人からはそう見られてしまう。
怖い。まぁでも日頃の行動なども積み重なってのイメージ
なのだからそれはそれで紳士に受け止めなければならないのだろう。
むしろ、その女子社員たちの豊な想像力に感服である。
その間違えっぷりも、話を面白くしようとしているとしか
思えないセンスに敬服ものだ。
 
そんな経験から私は1人でOLの会話に興味津々なのである。
え、浅野部長と荒木さんができてるんだ。なら
荒木さんと西野さんの関係は何?何でBが西野さんの電話
に出ないことを浅野部長に愚痴ったら、西野さんの
思う壺なのか。ははぁ。浅野部長が荒木さんと付き合う前の
愛人が西野さんなんだな。つまり西野さんは浅野部長に
まだ未練があり、浅野部長との接点づくりに日々奮闘している。
そのことを知っているAとBは愚痴ることで思う壺と判断
しているんだな。でも、西野さんは電話にちゃんと出たほうが
むしろ浅野部長との接点は増えるんじゃないのか?
うーん、西野さんは不器用な女性なんだな。
なんて限られた情報から私の脳内で膨らむ妄想のドラマは
そこらの推理小説より、私にとっては俄然面白いのである。
 
ぶっちゃけこれは犯罪なのか。まぁ想像を膨らましながらも
これって盗聴器で覗いている行為とそんな変わらんなぁ
なんていう理性も働いたりするのだけれど、私の好奇心旺盛な
脳は、耳を澄まさせ、キャッチした振動に対して
フル回転してしまうからどうしようもないのである。
ということで、OLの方々は極力、このようなスキャンダル話を
公共の場でお話されないことをおすすめする。
(個人的にはどんどんやって欲しいが)