字幕ができるまで

翻訳家と映画を見に行く。
映画に関わる仕事をして6年目。
こと翻訳という世界は未知であり
自分の視野が狭かったことへの痛感と
さらには視野が広がった喜びを
同時に体験するような語らい。
映画を見る上で、字幕はとても
重要なポジションを担っている。
にも関わらず、戸田奈津子さんという
名前で僕の中では全てが理路整然と
片付けられていたことに気が付いた。
 
DVDの普及に伴い、映像特典など
翻訳需要が増えていくなか
半ば流れ作業のように映像に字幕が
加えられていく。それは
モータウンのような華々しい
世界ではない。人は映画を見終った
とき「意訳が多すぎる」と文句
は言うが「字幕が良かった」とは
決して言わない。触れない。
野球で言えばキャッチャーみたいな
裏方の存在である。
 
もっぱら韓流ブームであるが
そこには全ての台詞の長さを
ストップウォッチで計り、さらには
その発音をカタカナに起こし
さらには一度日本語に翻訳したものを
翻訳し直し、字幕として映像に
加えられる。もしくは吹き替えとして
声優によって音に置き換えられる。
単価は90分8000円〜14000円あたり。
世のおばさん方のロマンスの
影の立役者はどこかの映像の音声と辞書に
今日も安月給で格闘している。